2人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
「なるほど。違いねぇ」
「その点お前は小心者じゃねぇからな。裏切られる心配なんて一切しねぇで済むから助かるよ」
「よしてくれよ兄貴。そんなの当たり前の事じゃねぇですか。俺は学がねぇから、兄貴がいなけりゃ仕事ひとつ上手くやれやしねぇんだ」
金髪の男が照れたように笑うと、スーツの男は煙草を地面へ吐き出して踏み消した。そして徐に上着の内側へ手を入れると、そこから取り出した物を金髪の男の頭へ突き付ける。
「あ、兄貴?なんの冗談だよ、これは」
暗がりで冷たく黒い光を放つそれは拳銃だった。先端にはサプレッサーが取り付けられている。
「悪いな。俺はそこに転がっている男以上の小心者なんだよ」
「お、俺が信用できねぇって言うのか?」
「言ったろ。信用はしてるさ。ただそれ以上にお前の馬鹿さ加減も分かっている。今回の山はでかくなり過ぎた。余計なリスクは出来るだけ取り除いておきてぇんだ」
「あ、兄貴……」
金髪の男は消沈した様子で俯いた。しかし諦めきれないようで、直ぐに顔を上げで口にする。
「た、確かに俺は馬鹿かもしれねぇけどよ、でも兄貴の言う通りに動いてりゃ、問題はないも……」
「そう言いながら三度、これまでお前は仕事で俺の言い付けを破った事がある」
「いや、でも今回は絶対……」
「よく言うだろ? 馬鹿は死ななきゃって。四度目は許されねぇんだ。大人しくそいつをよこしな。そうすりゃ、命までは奪いやしねぇさ」
観念した様子でスーツの男にくまのぬいぐるみを渡した金髪の男の名前は依田という。チンピラの典型のような男だ。
最初のコメントを投稿しよう!