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「……っ!」
ーーーどうして、
そうか……。
ーーー私なんかを好きになったの。
“あの人”も、こんな気持ちだったのか。
こんな風に彼女の気持ちを知ることになるなんて、僕は本当に馬鹿だ。
「どうしたの?」
「あ、いや……」
僕は努めて普通を装ってコーヒーを一口飲んだ。
「……“あの人”のこと、考えていたんでしょ」
「……さあね」
「……フラれたのに」
ボソリと春日がつぶやいたのを、僕の耳は聞き逃さなかった。まったく、春日は痛いところを突いてくる。
「耳が痛いな」
ーーー……君も大人なんだから、分かってよ。
そう、僕は振られた。それはもう、キッパリと。
ーーー……お願いだから……。
「私はっ!」
「……」
「私は……私なら、そんな顔させないよ」
「春日……」
僕はギュッと唇を噛み締める春日を見つめた。
春日を見ていると、昔の僕を思い出してしまう。あの頃は無我夢中で……自分の気持ちを伝えるのに精一杯だった。
ーーー……君の枷にはなりたくないの。
「ありがとう、春日」
「……! うー……そんな顔で見るなんて、ずるい!」
「……?」
一体どんな顔だっていうんだ……。
「さてと」
僕は書き上げた手紙を封筒へ入れた。
あの人に会いに行くときは、いつも手紙を持っていくようにしていた。それと……ーーー
「あ、その花」
春日はテーブルの上にある小さな花束に目をやった。
「その花、去年も持ってたよね」
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