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ラキ&ロトリィ・アートファクトリー誕生
「おっちゃん、カリグラフィできるん。見かけによらんなあ。」
「うっせー。見かけで人を判断するんじゃねーよ。」
「じゃあ、この花の花言葉でも書いてんか。」
「なんだよ、花言葉って。」
「知らんの?花言葉。」
「し、知ってるさ。花言葉くらい。花の・・・・」
「まあいいわ、とにかく『永遠の愛』って、さらさらっとかっこよく書いてんか。」
「う、『永遠の愛』だな。わかった。」
『ラキ&ロトリィ・アートファクトリーは宇宙に花を咲かせます。あなたの素敵なメッセージとともに。』
そんな画面のあとにアステロイドにファンシーな花のプリントがパッと咲きその上に花言葉や告白の言葉、感謝の文字などがいろんな国の活字で流れていく。ネットにアップされた、わが社のプロモーション・ビデオはなかなか反響があった。
「おまえ、商売上手だなあ。」
「まーねっっ。おっちゃんよりはねー。」
「ちっ、口の減らないガキだな。ちょっとほめると・・・」
「そんなことはええから、ちゃっちゃと注文こなさないと。」
「へいへい、商売繁盛でいいことだ。」
「もうかってまんなー社長ー。あっはっは」
それまでは名前だけ、文字だけだったアステロイドのネーミングライツが彼女のおかげで綺麗な花の画像までついたものだから、それまでの顧客層がぐっと広がって、いまや新規の注文は1年待ちしてもらわないといけないくらいになった。
しかも前はアステロイドの所有権ごと売ってたのを、所有権はわが社が持ったまま期間限定でシールドの上の画像と文字の表示だけをを1か月・3か月・半年などという売り方にして価格をうんと下げたものだから注文殺到。定型文に好きな花の画像を載せるのが一番安い。自分の名前を入れたりデザインの指定をすると少しずつ技術料を加算していくやり方になってる。
花の画像と文字というのは、同じシールドに乗らないので花の画像の上に文字のシールドを乗せる方法をとってるが、これがわが社の企業秘密だ。
お嬢ちゃんとはあんな出会い方をしたが、今は仕事のパートナーとして一緒にやってるってわけだ。卒論?ああ、なんとかなったらしい。そのあとで、俺のところにきて一緒に仕事をやりたいっていうんで、まあそんなところさ。
「おっちゃん、ぼーーっとせんとさっさとやってやー。」
はいはい。俺が社長なんだけどなあ・・・
今はどっちが社長かわかりゃしない。
ぶつぶつ言ってると聞こえたらしい。
「おっちゃん、なんかいったかー?」
「いや、なんでもないっっ。ほらよ、これでいいだろ。」
「よっしゃ、これに花の画像貼ってイッチョ上がりや。今日はあと10件こなしてやー」
「おいー、ちょっと休ませろよ。」
「あと2件こなしたらお茶にしよか。今日は上等なろくろーじーちゃんのチーズケーキあるから、はよぉやってなー。うちも新作の花の画像のプログラムあとちょっとやさかい。」
「わかった。あと2件だな。」
そんなこんなで今日もわが社は商売繁盛。もうかってまっか?ぼちぼちでんなーってなもんだ。
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