刺さるようなぬるい雨

2/2
23人が本棚に入れています
本棚に追加
/90ページ
 カッコつけてサンダルを履いたら夕立が来た。  路面の黒い水玉はみるみる広がり、視界は白く霞む。刺さるようなぬるい雨で濡れた足が重い。  駆け込んだコンビニの軒先、傘を買う気にもならず帰ろうか迷っていると、中から出てきた人を見て声が漏れた。 「……先生」  先生と言っても、半分遊びみたいな学習支援塾で教えるボランティア女子大生だ。  傘を買ったらしい彼女のワンピースはまだらに濡れていた。  結局、先生と一緒に塾へ行くことになった。  相合傘が照れくさくて俯いた視界に、彼女の濡れた足とペディキュアが飛び込む。それはやけに色鮮やかで、艶やかで、何故か咄嗟に目を逸らした。 「持つよ。俺の方が背高いし」  落ち着かなくてひったくるように傘を持つ。  塾までの道は長くて短かった。
/90ページ

最初のコメントを投稿しよう!