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夜の特別な条件下で見られる月虹というものについて教えてくれたのは、バイト先のカフェの常連である大学院生だった。いつしかパートナーとなった私達はいつか月虹を見に行こうと約束したけれど、叶うことはなかった。
彼の研究を応援する気持ちはあっても、残念ながらそれだけでは生活できない。月虹を見ると幸せが訪れるというそうだけど、私達にはいろんな意味で遠かったようだ。
窓から見上げた空、月には虹色の暈。
今、私が見ることのできる月の虹はこの程度。
明日は雨らしい。
洗濯物の心配をしながら見遣った息子の寝顔は楽しい夢でも見ている様子で、ささやかだけど手の届く幸せを実感させた。
その柔らかい髪をそっと撫でて呟く。
「……君はいつか月虹を見られるといいね」
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