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この街に来て走ろうと決めた。
ランニングの趣味はない。だけど海沿いをまっすぐに伸びる国道とほぼ直角に交わる坂道、青い空を見た瞬間そう思った。
平坦な道を選んでゆっくり走り、港近くの公園で休憩する。こうして見ると海と空の青って違うんだなと妙に感心した。
その時、少し離れた所で同じく空を見上げていた女性と目が合った。お互い口を開けて仰ぎ見ていたらしい。慌てて表情を取り繕うことでそれに初めて気がついた。
気恥ずかしさからどちらともなく会釈をすると、すぐに背を向け元来た道を走り出す。
服装から察するに彼女もランニングのようだ。
また会えるだろうかと考えた瞬間、鼓動が大きく跳ねた。水面が賑やかすように煌めいた気がした。
——今度は挨拶くらいできるだろうか。
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