TWINE

2/2
前へ
/90ページ
次へ
 ——まずい。  僕は焦り始めた。  就職セミナーに参加するため乗ったバスは、今日に限って遅れていた。  車椅子、お年寄り、そして双子用ベビーカー。乗降に時間のかかる利用者が、何故だか多かった。  誰も悪くない。  仕方ない。  電車が一本遅れるぐらいだし、早めに出たから大丈夫。  ……の筈だった。  この調子だと乗り換えの電車に間に合わず、その少しのズレの積み重ねで遅れてしまいそうだ。 「——間に合いますかね?」  そっと聞こえた小さな声に振り返ると、同じく就活スーツの女子がいた。  僕達は車内であらゆるルートを検討することにした。  偶然同じ会社に就職が決まった僕達は、後に結婚。  更に数年経って妊娠した彼女はある日、帰宅した僕に告げる。 「双子だって」
/90ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加