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結婚を機に引っ越したエリアはお洒落な店が多く、行き交う住人達はキラキラしていた。
僕達は犬を飼い、犬を通して交流を広げた。
季節は過ぎる。
妻は周囲の影響を受け起業を決意した。
僕はただ毎日仕事に追われていた。
情けないけど、僕は妻に嫉妬した。
この手から離れないで欲しかった。
キラキラの世界から脱落した僕は、結局、離婚に同意する。
よく一緒に散歩した海岸、二人の顔色を窺っていた犬が僕の傍を離れなかったのは、毅然とした妻との違いを心配したのだろう。
色々と情けない。
でもその不甲斐なさを受け止めてしまえば、不思議と清々しかった。
「改めてよろしく、相棒。男同士仲良くやろうな」
遠ざかる妻の後ろ姿を見送りながら愛犬に声をかけると、ワンと一声、返答があった。
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