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其の一 「ひめごと」
『季節の移ろいはなんて不思議なのかしら。何回も同じ季節を行ったり来たりして、まるで時計が回っているみたい。
春が訪れを知らせてくれる、冬眠から目覚めた動物さんたち。きっと魔法のお力をお持ちでいらっしゃるに違いありませんわ!いや、絶対に!
「そこの小さき淑女よ、それは違うぞ」
貴方はどなた?キリリとした瞳と陽の光を浴びてダイヤの如く輝く眼鏡。そうね、そうなのね。貴方は正しく才色兼備、眉目秀麗の権化!なんて知的な方なのかしら。夏を告に来た妖精さんに違いありませんわ!
「だから私の話を…」
人様の脳内お花畑に勝手に足を踏み入れるその度胸。私が求めていたのは貴方のような高貴なお方。私の白馬の王子様なんですわね、きっと。
「…人の話を聞け!このバカ娘が!」
まあ、私を罵るだなんて…。いいえ、罵倒してくださるだなんて!私、イケない恋にうつつを抜かしてしまいそう。どうすればよいのですか?
「知るか、もう帰るわ!」
嗚呼、お待ちになって!私の王子様ぁ!
もしや、雪の精にあらせられるお方…!よもやそのようなお方が私にお声がけくださった…?まあ私、なんて無礼ではしたない事を!
「やーいこの脳内お花畑ぇ!一生燻ってろ!」
わかりましたわ。私、いつか必ず貴方様に認めて頂けるような淑女になりますわ。いつか、きっと…。その為に私、もう二度と御手洗には行きませんわ!!!!』
「は…!」
この秘部の辺りの湿り気、そして漂う微かな芳ばしい香り。間違いない。
「寝ションベンだぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!」
私、本田雪柊は17歳。今でも夢見るメルヘン少女だ。朝からついてない、大洪水。
「ちょっくらシャワー浴びてこよ…」
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