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第四話 愛情の有無
「これからも頼んだからね」
さらっと言い切った瀬戸さんの顔には勝利の笑みのようなものが浮かんでいた。
「スリル満点だな♪」
「はあ・・・」
おかしいと思いながらも、彼の期待に120%応えたいと思っている自分がいる。
「でも、ばったり会う作戦はもう使えないかと・・」
歯切れの悪い私に、瀬戸さんが小嶋さんは生真面目だねぇと言うと僕は期待しているんだけどなと微笑んだ。
この人のこの笑みに、どうしても強く魅了されてしまう。
どうすればこの人にふさわしい立場になれるのだろう。
どんどん湧いてくる想いをどうしたら鎮めることができるのか・・。
「妹が何かやってきたら徹底的に戦ってほしいんだ」
困惑して言葉が出ない私に、瀬戸さんは自分ばかり頼ってしまって申し訳ないと言った。
「い、いえ・・。私でお役に立てるのなら」
努めて明るく答えると、彼はうん、ありがとうと口角を上げた。
彼の理想に、いつか私はたどり着くのだ。
そう信じている。
姉の目があの人に釘付けになったとき、幸先がいいなと思ってしまった。
私がこの世を去った後、姉を見ながら、そんなつまらない顔ばかりしていたらもったいないよと思い続けてきたからだ。
周りから人望がありそうなあの人を観察していると、運が良ければ姉は彼といい関係になって、私を失った苦しみから解放されるのではないかと一人で盛り上がってしまっていた。
将来見込みがあることに間違いはなさそうだけれど、彼には姉への心配りがまるでない。
話しかけてもらえることを待ち望んでいた姉の決断は早く、上出来だと褒められるためだけに彼の妹の恋路の邪魔をしている。
悪いことばかりでもないなと感じるのは、洋もまた姉のことを心配して手を差し伸べてくれようとしていることだ。
二人には幸福を手に入れてほしい。
例え洋が恋愛対象として姉を求めたとしても、どうってことない。
私はもう蚊帳の外にいるのだから、欲張りはしない・・。
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