かしこみ、かしこみ。

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かしこみ、かしこみ。

 大学三年にあがる春休み、どクズな彼氏ととうとう別れた。  夜遊び好き、ギャンブル依存、極めつけの浮気と、ニンニクマシマシレベルのガッツリ系どクズだったので、今さらとなってはもはや未練なんかない。  ただ、あの時のわたしはだいぶ彼氏に依存気味だった。  そのせいでひとつ、困ったこと。それは……。 「暇だ……」  どクズの束縛が強かったせいで、ろくに同性の友だちとすら遊ばせてもらえなかったし、バイトをしてもすぐに辞めさせられた。ヤツの呪縛が、今になってわたしを苦しめている。こんなときに呼び出せるような、友だちがいない。ほかに熱中することもない。あぁ、暇すぎる……。  そんな風にひとりごとをぼそりと呟きながら、最寄り駅から自宅に向けて歩く。  近所の神社の前を通りかかったとき、ふと、いつもは風景と化している神社の掲示板がなぜか目に付いた。  巫女アルバイト、募集……か。  しばらくその場で足をとめながら、そのチラシをぼうっと眺める。  そのときちょうど、神社の人らしき袴姿の、初老の男性が通りかかった。 「あ、あの!……すみません。このチラシのことなんですけど……」  気がついたら、わたしは、その男性に声をかけていた。
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