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境内に桜が舞う。
四月のある日、昼下がり。
巫女の衣装に身を包んだわたしは、竹ぼうきを片手に、かけられていた絵馬をしばらく眺めていた。
巫女のアルバイトをはじめたはいいけど、シーズンオフはだいぶ暇らしい。頼まれた境内の清掃も二週目が終わり、それでもきりのない桜の花びらに嘆息していたところだった。
……なんか、同じような絵馬が多いような。
お世辞にも綺麗とは言えない文字。たとえるなら、幼稚園児が覚えたてのひらがなを一生懸命書いているような。そのうちのひとつを、解読しようと試みる。
『さとうくんと、すずきさんが、なかなおりできますように ましゅう』?
な、謎が深い……!
内容から考えてみても、やっぱり小学校一年生くらいのましゅう君が、友だちたちのことを思って書いているんだろうか。
いや、それにしても、同じましゅう作の絵馬が多すぎる。
「ごとうさんのあかちゃんがげんきにうまれますように」。
「なぎさくんにいいひとができますように」。
……子どもにしては、内容がこまっしゃくれているような気がしないでもない。
しかも絵馬だって一枚数百円するから、子どものお小遣いでは買えないだろうし、親御さんだってそう何枚も書かせないだろうし。
もしかして、神主さんのお子さんとか、そういうたぐいなのかもしれないな……。
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