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「……日本語、お上手ですね」
なんとか吹き出すのを我慢しながら、彼に話しかける。
するとその外国人は、まるで古いアニメキャラクターのように、おおげさに頭を掻いた。
「イヤイヤ、恐縮デスゥ。アナタハ、巫女サン、デスネ」
いやはや、よく御存じで。
……なんて、彼につられて、わたしの思考までなんだか古風な物言いになってしまう。
「あ、はい。そうです」
「ワァ、巫女サントオ話シデキテ光栄デス。カシコミ、カシコミ」
かしこみかしこみって……、なんか、神様にお願いするときいうやつ?
一体、誰が教えたんだろう?
それにしても、わたしにかしこみかしこみ申されても困る。
「あ、えっと、こちらこそ……」
つい戸惑って、彼の面白い言動と相対して、面白くない返ししかできない。……いや、競うところじゃないし、彼もわざとじゃないんだろうけれど。
一方で彼は、目をきらきらとかがやかせながら、目の前の桜を見上げた。
「サクラ、トテモキレイデスネ。ヤッパリ、アメリカノモノトハ雰囲気ガ違ウ」
あ、アメリカの方なんですね。
そんな風に思いながら、わたしは彼に頷いた。
「そうですか……。ここのしだれ桜は、たしかに綺麗ですよね」
「ハイ、ズット見テイタクナル」
そう彼はぼそりと呟いてから、唐突にわたしのほうに向きなおる。
「シダレ桜ハ、アメリカデハ、weeping cherryトイイマス。意味、分カリマスカ?」
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