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唐突なクイズに、わたしはどぎまぎしてしまう。
だから、英語、苦手なんだってば!
コンマ一秒で首を横に振ったわたしを見て、彼はマシュマロのようにやわらかく、ふっと笑った。
「weepハ……日本語デイウト、ナントイウカ……悲シイコトガアッテ、ワーット泣クヨウナ、ソンナ感ジデス。ダカラ、『泣イテイル桜』……ミタイナ意味ニナリマス。
枝ガ垂レテイルトコロガ、我々ノヨウナ欧米人ニハ、悲シンデイルヨウニ見エタンデショウネ」
桜が、泣いている……か。なんだかたしかに、日本人には思いつかないような表現かもしれない。
泣いている桜。
彼氏の浮気がわかっても、泣けなかったわたし。
ここでこの印半纏のトム・クルーズに教えてもらう豆知識も、わたしにとってはなんだか皮肉なものだ。
わたしは「そうなんですね」と軽く頷いてから、彼と同じように、もう一度しだれ桜を見上げる。彼は上を見ながら、話を続けた。
「デモ……、ボクハ、コノ美シイ桜ガ、泣イテイルヨウニハ見エマセン。
仮ニ悲シイコトガアッタトシテモ、コンナニモ堂々ト、咲キ誇ッテイル。
ソノ強サガ、トテモ、美シイ」
そんな言葉に、思わずわたしは、彼の顔を見た。とっても、やさしい顔。
……なんだかちょっと、ときめいてしまうじゃないか。やめてくれ、トム・クルーズ!
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