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「それでは稲垣三等陸尉、状況の報告をお願いします」
防衛省の小会議室に極秘裏に召集された防衛閣僚の前で、名指しされた陸上自衛隊・陸上幕僚幹部指揮通信システム・情報部別班所属の稲垣竜也三尉は自衛官らしいきびきびとした動作で踵の音を立てながら起立し、敬礼をした。
「はっ」
稲垣陸尉にとってこのような報告会議に呼ばれるのは極めて珍しい事だった。所属である情報部別班とは言ってみれば外国の国家安全に係る調査機関部署に近い活動が担当で、表だって活動は殆ど行っていない。会議の場合も殆どがテレビ会議であり、閣僚と直に顔を合わせる事など初めての事だった。
だが本事案が、現職の防衛大臣の御子息の消息に係る問題であった為に特命が下った。
会議室には内閣情報調査室の知った顔の姿もあった。空自の中空SOC(入間基地)の管制官もいる。かなりの大事だった。
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