スキャンダル

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「報告します。本事案は一か月程前、関東空域で大量の火球様の飛翔物体が目撃された事に端を発します。本来は気象庁の案件、事象ですが、その規模の大きさとその後の電離層異常、不自然な軌道等から自然現象ではないとの報告が寄せられ、中には中空SOCでもレーダーで捕捉・追尾されたものがあり、これをもって人工的な飛翔物体ではないかとの見地から、調査が開始されたものです」  この中では稲垣が一番若く、位も低かった。こんな空想の世界のような出来事に自分が関わるとは夢にも思わなかったというのが正直な所だ。一旦発言を止めて、間をとった。  議長となるべき席に腰を下ろした防衛省事務次官補佐・関沢儀一が間に入った。 「本事案とその火球事件との直接の関連について、端的に述べてください。三尉が調査に加わったという事を踏まえて」  穏やかだが威圧的な声で、関沢は言った。長い会議は好きではないようだ。それは稲垣とて同じ事だった。  その場のお歴々や分析官、レーダー管制官等は寧ろそちらの話をこそ聞きたい所だろうし、意見もあろうが、逆らうべくもなかった。
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