終章 光ある大地

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 そういえば、王都に帰ってきてから数日経ったある日、キルヤがこっそり教えてくれたことがある。  王都でリンファと七年ぶりの再会をした後、二人でジンレイの家へ向かう途中、彼女がふと話したそうだ。 『みんな大人になってそれぞれの道を歩いて行くけれど、道を決めるまでの時間を共に過ごした存在が今もこうしてそばにいるからこそ、安心して自分の道を行ける』のだと。  この言葉を聞いた時、どうしてリンファが学修院卒業と同時に街を飛び出たのか、解った気がした。  ジンレイが知る限り、自分達は彼女にとって初めて出来た『友達』と呼べる存在だ。それなのに別れの挨拶もなく、前もって話しておくこともなく、突然街を出ていったのはそういう理由からなのだろう。  ジンレイ達を軽視していたのではなく。  周りの人間の気持ちには気が回らないほど、猪突猛進だったのでもなく。  ただ、みんなならきっと待っていてくれると固く信じていたから。たとえ自分がこの街を何年離れようと、帰ってくるべき場所はここなのだと決めていたから。  だからリンファは決して躊躇わず、卒業の翌日に魔術学園都市へ旅立ったのだ。  もしかしたら、それはみんなにも言えることなのかもしれない。  きっとジンレイ達には根の部分を支える、一本の柱のようなものがあるのだろう。  人はそれを〝絆〟と呼ぶ。  目には見えないけれど、六人の間を繋いでくれるものが心の中で息づいているのを確かに感じる。  願わくは、リンファが話してくれたように。  共に笑い、共に泣き、みんなで大人になっていきたい。そして、それからもずっと。  誰ひとり犠牲にすることなく昇った新しい太陽の下で、俺達は今日もこの荒涼な大地の上を歩いていく。  この光ある大地(グリームランド)を――。
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