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 不意の口づけで、口紅がはみ出してしまった。 「龍樹、こっちでやるつもりねぇの?」  拠点にしているライブハウス、ジーラスに車を走らせながら、崇純さんは僕に聞いた。 「機会があればやりたいですよ、僕も」  名古屋のバンドシーンの中心でもあるジーラスは、田舎でバンドをやっている僕にはやっぱり憧れだった。  崇純さんのバンド、ナイトメアは既に全国レベルで名前が売れ始め、ジーラスでやることは減っていたけど。でも、今日は久しぶりのジーラス。  そして、僕はそのナイトメアのローディー。崇純さんは家が結構近いこともあって、よくこうやって迎えに来てくれていた。しかし、メンバーに送ってもらうローディーって…。僕はまだ高校生だから、しょうがないんだけど。 「でも、僕のバンドじゃ無理ですよね」 「半端だもんなぁ、お前んとこ」 「そう思います? やっぱり」  普段から自分でも思ってるんだよね。崇純さんに言われると、逃げ場がない。 「いい話、あるんだけどって言ったら?」 「え?」 「お前は出られるかもしれないぞ」 「どうやって?」
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