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 僕のバンドは力量がなさすぎて、デモテープを持って行ってもはねつけられてしまう。何回やっても同じだ。審査に通るとは思えない。  崇純さんの話を半信半疑で聞き返す。彼は冗談がとても好きな人だから。僕なんか騙されてばっかり。 「今日、対バンで出るとこあるだろ」 「どっちですか」 「ルージュレイズの方」  それなら知っていた。ナイトメアに近い、ちょっとダークな音楽をやっているバンド。挨拶くらいはしたことがあるっけ。メンバーの誰かとは打ち上げで話したこともある。 「何かあったんですか?」 「ヴォーカル抜けるんだって」  そう言って、崇純さんは僕に笑いかける。  それでわかってしまう。崇純さん、紹介してくれるつもりなんだ。ルージュレイズは元からジーラスのバンドだし、僕の好きなタイプの音楽だし。  やっぱりいい人だなぁ、ついてきて良かった。崇純さんの後ろに後光すら見える。 「お前、やる?」 「やりますよっ」  今日は気合い入れて働こう。そう決意して前を向いた。
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