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”だから何?”
グ号に憑依した來未は開き直った。夫が選んだ下らない名辞に毒された生涯を送るなら、と堕胎を選んだ。もちろん、心の傷は消えない。スフェーンとして自分或いは誰かの体内に記憶される。
そしてマオサウは退廃的な観光地でなく、肥沃の大地として再生する道を選んだ。民主的な選挙に勝利した歴代政権の総意だ。
それを知ったうえで一旦は絶望し、一晩泣きはらして彼女なりの答えを導いた。
マオサウを惑星ごと抹殺する。
「母親にまだ生まれぬ娘の人生を支配する権利はないわ」
"産めない癖に、それ嫉妬?”
図星を指されて真帆はへこんだ。天使は繁殖しない。しかし、何かの母にはなれる。人間でなくとも国や平和や概念的なあらゆる事の。
「私を殺せば、軍は惑星破壊ミサイルを寄越すでしょう。でもそうはさせない」
”なら貴女を撃つまで”
グレイス号の砲門が力を溜めていく。
何か無いのか。真帆は最強の戦艦らしく脳力を総動員した。
「來未、貴方がやろうとしている事は、ドメスティックバイオレンスよ。人類に対する」
”それで?私は夫に散々されたの”
効かない。
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