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「そんなゲス男の怨念を連鎖してもしょうがないでしょ。いつまで旦那に支配される気?」
”みんな下衆。世の中全てが。マウサウも。だから消すの”
埒が明かない。その時、真帆は閃いた。マスコミだ。グレイス号は感受性が高い。情報収集のかなめだ。ならば…。
”なっ——?…何を…したの?”
姉の艦が急速に降下していく。やがてマオサウの大地を抉るように横転、座礁し、砲門をさげた。
虚空に各国の救助隊や軍が実体化し、グレイス号を包囲する。特殊部隊が接舷し、負傷者の救出を開始する。
その陣頭にビキニ姿の天使が降り立った。
「我儘な人には《どうすることもできない》現実を自覚させるしかない。來未さん、姉を返して頂戴」
”あの子は死んだわ…誰にもどうすることもできない”
來未の意識は未練たらしい。
真帆はスフェーンを艦橋の端末にセットした。
「マオサウ人が人生の機微を共有する能力があるのなら、利用させてもらったわ」
制御中枢が息を吹き返し、玲奈の記憶が再格納されていく。真帆は記者達の本社を通じてありとあらゆる報道機関にグレイス号への連絡を呼びかけた。処理能力が飽和し艦にシステムダウンが生じた、という次第だ。
3D印刷機が喧しく稼働し、3人の女が転がり出てきた。玲奈と來未ともう一人。「痛い痛い!ちょっとは詰めてよ」「うるさい!デブス」
窮屈なカプセルが開くと兵士に銃を向けられ、三人は降参した。
そして、その中の一人が目をぱちくりさせた。「ねぇ、どっちがお母さんなの?」
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