花言葉は望郷

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「ご~覧ください。眼下に広がる一大パノラマ!」 「ちょ、お姉ちゃん!」 衛星軌道からでも惑星マオサウの惨状は一目瞭然。まるで氷河期の全球凍結を思わせる白さだ。 ただ表面は石灰質で覆われている。それを玲奈は乗客に紹介している。彼女は命知らずのジャーナリストを載せることで返済する道を選んだ。 それを妹は非難できない。なりふり構ない方法で青春を安全保障という大義に摘まれたからだ。 「正真正銘の珪素。混じりけなしの純粋シリコンよ」 さすがは野次馬根性満載の強攻偵察型航空戦艦。とは、名ばかりの観光船。詮索する力は抜群だ。 「緑豊かな植民星が一夜にして荒廃するって…そんな」 悲鳴をあげたのは乗客で重度障碍者の來未だ。特権者の攻撃を受けて要介護になった。 グレイス号の艦橋で故郷を見たいという切実な願いを玲奈はかなえた。 「ああ、そんな」 枕を号泣で濡らす來未。 善意が仇となっては流石の中二少女もかける言葉がない。この後、彼女を療養所に帰す重責がある。 「お義母さんがいらしたんですね」 転移してきた真帆が寄り添う。 「ええ、これも特権者の攻撃でしょう。あたしは憎い!」 來未は目を腫らして訴えた。「十中八九、大量破壊兵器ね」 玲奈も頷く。 「取り合えず降りましょう」 真帆は水着姿になるとバサリと翼を広げた。玲奈も倣う。航空戦艦は高度を三千まで下げて、気閘を解放する。 ざっと首都近辺と思しき空域を一巡してみる。大地に起伏はなく、ただびっしりと粒子状物質がある。 「兵器が使われたにしちゃ、この均一性は何なの?」 多元断層解析図を虹彩に映しながら玲奈が問うた。グ号の精密検査で残骸の形状が類型化されつつある。 大小ちがいがあるが、おおむねパターンが収斂した。それも嫌な結果だ。 「一本、行っとく?」 「ちょ、お姉ちゃん、私、いい」 有無を言わさず画像が共有される。そして、真帆は絶句した。 人間の骨だ。解剖学的標本が一揃い、いや人口の数だけあった。
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