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「これが一覧です」
真帆は軍諜報部にマオサウ人の消息を照会した。來未を含めて該当者は二千余が系外にいる。軍警察が安否確認をしたところ全員が死亡していた。
「噓でしょ」
絶句する彼女の視界に検死結果が積み重なる。漏れなく白骨体で見つかった。
「既往歴、持病、事故や殺人を含めて死因が特定できません。強いて言えば老衰」
検視官は骨粗鬆症が進行度合から寿命という線もあり得るという。
「じゃあ、來未は…」
「彼女の旧体は溶解処分済みで」
「そうね」
証拠保全し忘れた自分を悔やんだ。マオサウ人は温厚で実直で質実剛健で長寿だ。信頼が厚く各国通商代表部や貿易会社の要職を務めるほどだ。
欠員が生じた部署はてんやわんやだろう。なぜ彼らは絶滅したのか。共通項を探らねばならぬ。
「死亡者の健康データを頂戴。出生から洗い浚い」
真帆はWHOに調査権を行使した。苦情は査察機構が圧し潰す。事務長は横暴だと激怒しつつ協力を申し出た。
”複数熱源体、来ます”
極超音速ミサイルを電探が捉えた。アウトレンジからの攻撃だ。玲奈は敵弾の運動性能から弾着点を逆算、微誘導弾幕を十重二十重に張る。
「ミサイル芸人とか、聞いてないよ」
玲奈は高機動バーニャを縦横無尽に噴射しつつ全弾回避した。連鎖する火球に紛れて來未が羽ばたく。
ミストラルが追い付きざまに第二波を発射。どこに残弾を隠しているのか。
ブースターを焚いて急旋回、女に追いすがる。
「來未さん」
ダメ元で思念波を送ってみた。同じ天使なら受信できるだろう。
だが、彼女は振り向き様に第三波を放った。至近距離だ。避けきれない。
「防御陣きゃねえな」
機首前方に魔法陣が展開した。天使が陸上で使う護身術式。飛翔の邪魔になる。
爆風の晴れ間に來未の後ろ姿を確認。ガンカメラが画像を拡大する。
「えっ? 天使じゃない?」
玲奈は目を見張った。完全武装の戦闘用ドール。無機質で無慈悲な殺戮機械だ。
騙された。美玖は天使の体を3D印刷したのではない。これは囮だ。
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