花言葉は望郷

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明らかに來未と思しき声が星域内の全艦船に響き渡った。熊谷真帆の処刑とマオサウ人の解放を宣言する。 「姉の(からだ)と記者達を還しなさい。私を沈めて民族の名を汚したいの?」 両艦は至近距離で全砲門を向け合っている。その一挙一動が中継されている。戦闘能力は互角だ。 真帆は意識の隅でとある惑星の地元刑事と対話していた。 「ご依頼通り、遺体を再見分したんです。いやあ、驚きましたよ」 骨髄から特殊な病毒が検出された。それはマオサウ人の常在菌であるらしく、長年にわたり体内のカルシウムをケイ酸化させる作用がある。 「ケイ酸カルシウムは肥料の原材料ね。マオサウ人はいずれ土に還る運命だった?」 「そうですが、もう一つ、女性のあなたならご存知でしょう」 刑事は遺骨から摘出された異物を見せた。 「スフェーン!人生に最高の喜びをくれる宝石」 「ええ、珪酸化の過程で骨の成分がチタンと交代します。これは半導体記憶素子としても機能します」 真帆は來未の直近の行動を振り返った。衆目を前に弔問の必要性を説いた。記憶に刻まれる大芝居だ。 「そう…それで彼女は、というかマオサウ人はメリハリのある人生を」 刑事は返事の代わりに宝石を電送してきた。真帆が解読すると故人の功績と知恵や思い出が凝縮されていた。 「人類圏税務局から種子密輸事件の協力要請がありました。かなり大掛かりですね」 そこまで聞くと、「使えるかもしれない」 真帆は宝石を手に艦橋へ駆け上がった。 そして呼びかける。 「來未さん、わかってるやってるの?ベラドンナちゃんが生きているって」
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