遠い国

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遠い国

ふつう知っていそうなことを 僕がなにも知らないので 遠い国からきた人なのだろう あなたは僕をそう思っているようで 遠い国なんて知りません 夢みたこともないのです そのかどの曲がりかどに 紫陽花がゆたかに咲き始めたこと その下に通う黄色い猫がいること このアパートの窓から見えるすべてを たどたどしく、あなたに話すうちに そのかどの曲がりかどの先を 靴を履いて見に行きたくなって 僕は知るかもしれません 夢みるかもしれません 遠い国の部屋の窓から あなたを想うかもしれません
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