5.雨上がりの朝

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5.雨上がりの朝

「……じめ、肇。誕生日おめでとう」  体を揺り動かされた。 「ん……あきひろ?」  いきなり寝室がまぶしくなった。カーテンが開けられたのだ。 「雨が上がった。散歩に出かけるぞ」  細めていた目が明るさに慣れてくる。自分をのぞき込む秋央を見て、肇は息をのんだ。  白いTシャツの上に青いチェックのシャツをはおった姿。そして朝日に照らされる微笑み。  肇は跳ね起きた。 「秋央!」  秋央が視線をそらしつつ、赤くなった顔で答える。 「その、やっぱり恥ずかしいから、まずは散歩からな」 「はいっ、ありがとうございます!」  秋央がじっと目をのぞいてきた。 「お前、緑のシャツは?」 「持ってきました!」  ベッドから飛び降りると、秋央が鋭く叱った。 「こらっ、下の家に迷惑!」 「すみません!」 「Tシャツは持ってきたのか?」 「忘れました!」 「とりあえず顔を洗ってこい!」 「わん!」  お前はもうと言いながら、クローゼットに向かう秋央の背を見て、肇は笑顔が浮かぶのを止められなかった。  午前六時半、秋央から借りた白いTシャツに緑のチェックシャツを腰に巻いて結んだ肇と、おそろいの青いチェックシャツを着た秋央はマンションのエントランスを出た。すぐ近くにある、港の方へ続く遊歩道を並んで歩く。  濡れた木々から落ちてくる滴に首をすくめたり、わざと枝を揺すって笑い合ったりしながらも、絡めた指は離れることはなかった。  そして帰宅した肇は、秋央から深い緑と紺のストライプのネクタイを贈られ、小犬のごとく跳ね回ってやはり叱られたのであった。 ――了――
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