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「マスクはお1人1セットです!!
あ!お客さん!順番に!ソーシャルディスタンスですから間隔開けて順番に並んでください!!」
スーパーマーケットの店員の注意の呼び掛けも何処吹く風、客は押し合いへし合いして台に並々と置かれたマスクの束を取り合いになっていたのだ。
「取らないで!私が買うんだから!」
「私が買おうとしたら!何で横から取るのよ!!」
「いいからよこしなさい!!」
「いや!俺が買うんだ!!」
ざわざわざわざわざわざわざわ!!
慎太は唖然とした。
今在庫が少なく、入庫するのも稀になっている使いきりマスクの束を『3密』を無視して客達が群がって取り合いをしていたのだ。
ざわざわざわざわざわざわざわざわ!!
「父さん!母さん!何してるの!」
慎太は、そのマスクに群がる中に父と母を発見して思わず声をかけた。
ざわざわざわざわざわざわざわざわざわ!!
父も母もマスクの取り合いに夢中になって、慎太の呼び掛けに聞く耳持たなかった。
「みんな!みんな!狂ってるよ!今、どんな状況か知ってるの?!
『密』になって群がって!!新型ウイルスに感染したらどうするの!!
んもう!!人間って!!何で恥知らずが多いの!!」
きゃんきゃんきゃんきゃん!!
慎太の愛犬のユリも、動転したように狂ったように吠えたてた。
ざわざわざわざわざわざわざわざわ・・・
「慎太!お待たせ!買ってきたよ!マスク!」
両親が持参のトートバッグから、何とか強奪したようにヨレヨレになった1束の使いきりマスクを慎太に見せて苦笑いした。
「パパ・・・ママ・・・」
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