2.初恋は記憶の底に

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机に片肘をついて窓のほうに視線を向けると、そのガラスに自分の姿と教室の風景がぼんやりと映る。 赤のネクタイに、紺のブレザー。 朝も鏡で見たけれど、自分の制服姿にはまだ違和感があった。 それに、窓ガラスに映る同じ制服を着たクラスメイトたちにも。 まだ新学年が始まったばかりなのに、窓ガラスに映る私だけがこの教室で浮いているように見えて仕方ない。 私はここで、うまく無難にやれるだろうか。 彼の存在に一瞬心が浮ついたものの、自分のこれからのことを思うとやっぱり気持ちが沈んだ。 いくら彼が同じクラスだったからと言って、私のことを覚えているわけでもないし、親しいわけでもない。 見ているだけの存在でしかないのだ。 それだからなおさら、無難に悪目立ちせず、嫌われないように過ごさなければ。 「ねぇ、深谷(ミタニ) (トモ)ちゃんだよね?」 決意を固めるように窓ガラスの自分を睨んでいると、突然後ろの席の女子が背中をつついてきた。
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