2.初恋は記憶の底に

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クラス名簿で前後の席の人の名前を確認はできるだろうけど、彼女の訊ね方はまるで私のことを知ってるような口ぶりだ。 驚いて瞬きしていると、色白でくりっとした目が印象的なその子が、私を見て人懐っこく微笑む。 「私、村田(ムラタ) 智香(トモカ)。地元の幼稚園と小学校が一緒だったんだけど、覚えてる?」 「村田、さん……?」 聞いたことのあるような、ないような名前に首を傾げる。 「覚えてないかな?昔はよく『トンカ』って呼ばれてたんだけど」 村田さんがそう言ったとき、ようやくその名前にピンときた。 「あぁ、トンカちゃん」 確かに、そういうあだ名で呼ばれていた女の子がいた。 でも、目の前にいる村田さんと記憶の中の『トンカちゃん』の印象はかなり違う。 『トンカちゃん』はもうちょっと…… 「そう。やっぱり、深谷 友ちゃんだ!」 にっこりと笑う村田さんの大きな声が、私の思考を遮る。
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