2.初恋は記憶の底に

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「クラス名簿で、『友』っていう一文字の名前にすごく見覚えがあると思ったんだー」 『トンカちゃん』と同じクラスだったのは、私の記憶では幼稚園のときと小学校の4、5年生のとき。 普通に話すけど、そこまですごく仲が良かったわけでもなかった。 それなのに、昔の『トンカちゃん』の印象がほとんどない村田さんは、まるで古くからの旧友みたいにペラペラと話しかけてくる。 「友ちゃんが同じ高校だったなんて知らなかったよ。中学は地元じゃなかったよね?」 「中学は受験したから」 「そうだったんだ。それで、高校でここ受けてたの?」 「そうじゃなくて、2年からの編入」 素っ気ない態度をとる私に、村田さんはずっとにこにこと笑いかけてくる。 編入だって言ったら、何か事情があるのかと勘繰られるかと思ったけど、村田さんの表情は変わらない。 そういえば『トンカちゃん』は、誰に何を言われてもいつもにこにこと笑っている、そういう女の子だった。
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