2.初恋は記憶の底に

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「あ、リョウくん、カナくん。おはよう!」 村田さんの声に気付いたふたりが、同時にこっちに視線を向ける。 ふたりの視線が捉えたのは村田さんだけなのに、私の鼓動はドクンと大きく跳ね上がった。 「リョウくん、カナくん、ちょっと来て来て」 村田さんに呼ばれたふたりは、不思議そうに顔を見合わせてからこっちに向かって歩いてくる。 その姿に、私の鼓動はさらに高鳴った。 「ほら、あのふたりだよ。石塚 竜馬と……」 村田さんが、向かって右側の緩くパーマのかかった茶髪の男子を指さしたあと、その隣にいる黒髪で二重の切れ長の目が印象的なもうひとりを指しながら私を見る。 「その横が、星野(ホシノ)奏樹(カナキ)」 村田さんが教えてくれたもうひとりの名前は、聞かなくてもその顔を見た瞬間からわかっていた。 まさにその人こそ、転入手続きの日に校庭で見つけた私の初恋相手であり、今朝クラス名簿でその名前を見つけたときから気になって仕方がなかった人だったからだ。
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