2.初恋は記憶の底に

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深谷(ミタニ)……?」 ドキッとしながらふたりを見上げて小さく会釈すると、私の顔をじーっと見てきた石塚くんが「あー」と大きな声をあげた。 「いたいた、深谷。思い出した」 「ね、懐かしいよね」 遠慮なく私に向かって指差してくる石塚くんを、村田さんがにこにこと見上げる。 それから、村田さんが星野くんのほうに視線を向けた。 「カナくんも覚えてるでしょ?」 村田さんに訊ねられて、星野くんが私に視線を向けた。 そのことに一瞬胸がときめいたけれど、すぐに彼が私を冷めた目で見ていることに気が付いてしまう。 嫌な予感に、胸が騒ついた。 「カナくん?」 村田さんが何も言わない星野くんを見上げて、不思議そうに首を傾げる。 「ごめん、(トモ)ちゃん。俺はわかんねーや。誰だっけ?」 無表情で私に向かってそう言った星野くんが、村田さんを振り向いてふわっと笑いかけた。
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