1.微かな希望

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「それでは、新学期からどうぞよろしくお願いします」 どうやら、大人たちの話が終わったらしい。 お母さんがそう言って、校長先生に深々と頭を下げていた。 「はい。お待ちしております」 お母さんに穏やかな笑みを浮かべてそう言った校長先生が、ふと私に視線を移す。 弾かれたみたいに慌てて椅子から腰を上げると、校長先生が私に優しい眼差しを向けた。 「深谷(みたに) (とも)さん、新学期にまた会うのを楽しみにしていますね」 『会うのを楽しみに』って言うけど、校長先生の顔を見るのなんて、始業式とか朝礼のときくらいでしょ。 普段の学校生活で会うときなんてないのに。 そんなことを思いながら、無言で小さく会釈した。
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