2.初恋は記憶の底に

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◇ 運の悪いことに、星野くんの席は出席番号順で私のひとつ前だった。 自分のとった態度をあとからひどく後悔したけれど、言ってしまった言葉は取り消せない。 星野くんは昔から男女問わず誰にでも分け隔てなく接することのできる男の子だったけど、それは今も変わっていなかった。 前の席や隣の席の人はもちろん、クラスの誰とでも仲良さそうに話している。 ただひとり、私を除いて。 星野くんには私だけが見えていないみたいで、休憩時間中に後ろを振り向いたときも、私を挟んでその後ろにいる村田さんによく話しかけていた。 席の横に身を乗り出して村田さんに話しかけている星野くんを見ていたら、自分がふたりを阻む障壁に思えてきて、居心地が悪い。 たまに村田さんが気を遣って私にも話しかけてきてくれたけど、何か答えると、星野くんは決まって何も聞こえてないみたいに私の声だけをスルーした。 それが結構悲しくて、授業の合間の休憩時間になると無駄に席を取ってトイレに行くフリをした。
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