2.初恋は記憶の底に

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「ねぇ、村田さん。私たち、これからバイトあって急ぐんだ。ゴミ捨て頼んでいい?」 教室からほとんど片足を外に出しながら、ほとんど強引に村田さんにゴミ捨てを押し付けようとする野宮さんたちの態度に、「え?」と思った。 「あー、ごめん。俺も今日部活の準備で急ぐんだ」 野宮さんたちの言葉に、同じグループの山辺くんも壁時計に視線を向ける。 それを聞いた村田さんは、野宮さんたちの顔を見てにっこりと微笑んだ。 「そうなんだ。いいよ、私が持ってくね」 「じゃぁ、俺手伝うよ」 すかさず星野くんがそう言うと、野宮さんと持田さんの笑顔が少しひきつって見えた気がした。 「いいよ。カナくんだって今日、部活の準備あるでしょ?」 「でも、智ちゃんだって同じだろ」 「大丈夫だよ。私はマネージャーだし」 席替えをする前に、私を挟んで繰り広げられていた星野くんと村田さんの会話から、星野くんは男子バスケ部で、村田さんはそのマネージャーをやっているらしいことは知っていた。
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