2.初恋は記憶の底に

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マネージャーだって、部活前の準備はあるだろうに、嫌な顔ひとつせず引き受けた村田さんに、「それでいいの?」と疑問が湧く。 ふたりのやりとりを黙って見ていたら、不意に星野くんが私に視線を向けた。 『お前は暇なんじゃないのか』と、そんなふうにも受け取れるくらいの視線の圧を感じてつい視線をそらす。 いつも私のことを無視するくせに、こんなときばかり視界にいれられても困る。 「村田さん、悪いけどお願い。私たち、もう行かなきゃ」 「あー、俺も。悪い、先行くわ」 山辺くんがカバンを引っ掴んで教室を飛び出す。 それから、野宮さんと持田さんも教室を出て行った。 残されたのは、星野くんと村田さんとそれから私。 なんとなく他の3人のように立ち去るのも気が引けて黙って立っていると、星野くんがため息をついた。 「山辺はともかく、野宮たちは面倒ごとを智ちゃんに押し付けたんだよ。ゴミ捨て、俺も手伝う」 星野くんはそう言ってゴミ箱からゴミ袋を取り出すと、黙ったままでいり私を冷たい目で一瞥した。
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