2.初恋は記憶の底に

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ゴミ捨ての話をしているということは、野宮さんと持田さんなのだろう。 彼女たちは、本人がいる前で村田さんのことを『トンカ』とは言わない。 その呼び方や声のトーンに嘲りの感情が入り混じっているような気がして、なんとなく足が止まった。 「星野くんとトンカって付き合ってんのかな?部活のマネージャーっていうのもあるけど、それにしても仲良いよね」 何気なく口にしたであろう彼女たちの会話を隠れて聞いていた私は、勝手にひとりでドキリとした。 星野くんと村田さんは付き合ってるのかもしれない。 私自身も、ふたりを見ていて同じことを考えたことがあるからだ。 仮にそうだったとしても、私には関係のないことなのに。 星野くんが初恋相手だったからか、その恋心が私の中でうまく昇華できていないのか。 ふたりが付き合っていることを想像すると、胸が痛んだ。 「あー、なんかそんな噂もあるよね。でも、村田さんて実際はバスケ部の槙野くんと付き合ってるんでしょ?」 野宮さんや持田さんとは違う別の声が聞こえてきて、次の瞬間にガッカリしたような悲鳴が聞こえてきた。
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