2.初恋は記憶の底に

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下駄箱の陰で立ち止まる私の足が竦む。 以前の私なら、陰口を言っている人たちのそばを颯爽と通り抜けていくことができた。 でも今は…… 今までみたいに行動に移すのが怖い。 野宮さんや持田さんたちの話を聞いていなかったフリをして進み出ることはできないし、彼女たちの言っていたことを咎めることもできない。 いなくなるまで、ここに隠れて待つしかないかな。 そう思ってしばらくじっとしていたけれど、彼女たちは別の話題に話を咲かせ始めていてなかなか立ち去りそうもなかった。 ふたりとも、バイトで急いでいるんじゃなかったっけ? 村田さんの陰口を言っていたことから考えると、急いでいるというのは彼女にゴミ捨てを押し付けて嫌がらせするための嘘だったのかもしれない。 野宮さんたちがなかなかいなくならないので、私は諦めて教室に戻ることにした。 教室で予習でもしていたら、終わる頃にはさすがにいなくなってるだろう。
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