2.初恋は記憶の底に

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嫌な感じで脈が早くなり、手の指先が震えた。 「何かやらかして先生にチクられたりしてたってのもあるけど、あいつ、幼稚園の頃から俺の持ち物とか作品とかにやたらケチつけてくんだよ。初対面のときだって、親戚に『カナちゃん』だか知らないけどそういう名前の女がいるらしくって、名前が女みたいって言ってきたりとかさー」 星野くんが不満げに話す言葉ひとつひとつが、私の胸に突き刺さる。 彼の話は全てが正しいわけではないけれど、確かに彼を不快にさせたと自覚のあるエピソードはいくつかある。 だけど…… 「そういえばカナキ、小学生の頃はよく深谷にちょっかいかけられてたよな」 「ちょっかいか?嫌がらせだろ」 「でもさ、知ってる?深谷って昔、カナキのこと好きって噂あったの」 「いや、ないだろ」 「なくないよ。俺も、チラッと聞いたことあるし」 「カナキのこと好きだから、嫌がらせしてたとか?」 石塚くんと槙野くんが、揶揄うように笑う。 「小学生男子かよ。そんなのいらねぇし」 石塚くんたちの笑い声を否定するように、星野くんの不機嫌な声が聞こえてくる。 そのことが、私の胸に突き刺さった見えない傷の痛みをさらにグリグリと抉った。
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