1.微かな希望

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「遅ぇ、カナキ。授業中にナンパしてんじゃねーよ」 校庭にいる生徒のうちのひとりが、冗談まじりに叫ぶ声が聞こえる。 「してねーし」 それに対して大声を張る彼の後ろ姿と、聞こえてきた彼の名前に胸が騒ぐ。 体育の授業中の生徒たちの集団に戻った彼がサッカーボールをそのうちのひとりに渡すと、中断されていたらしいゲームが始まった。 他の生徒たちに混ざって校庭を駆け回っている彼の姿が、私には一際目立って見える。 遠目にだけれど、友達と笑いながらふざけ合っている彼の横顔が、昔見つめていて彼の横顔にリンクした。 私を見ても何の反応も示さなかった彼は、きっとただのクラスメートだった私のことを忘れてしまっていると思う。 最後に彼とクラスメートだったのは小学生のときで、もう5年も前のことだから。 でも私にとっての彼は、そう簡単には忘れられない人だった。 地元の幼稚園と小学校の同級生で、結構長いこと片想いし続けてた私の初恋相手。
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