1.微かな希望

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「ごめん、何でもない」 既に正門のところまで先に辿り着いているお母さんが、振り返って私を待っている。 慌ててお母さんに追いついた私は、正門を通り抜ける前に校庭を振り返った。 もう授業の終了時間が近付いているのか、試合を終えた男子生徒たちが少人数のグループになりながら先生のほうに集合し始めている。 その中に、友達と戯れあいながら笑っている彼の姿も見えた。 「友ちゃん?」 また立ち止まっている私を、お母さんが不思議そうに振り返る。 「あ、うん」 後ろ髪を引かれるような気持ちのままお母さんの横に並ぶと、お母さんが私の横顔を見つめてきた。 「何?」 「うぅん。友ちゃん、新しい学校気に入ったのかなーって」 「どうかな。まだわかんないよ」 「友達がたくさんできるといいわね」 笑って言いながら視線を正面に戻すおかあさんに、私は何も答えられなかった。 友達とか、楽しい学校生活とか、そういうのにはもうあまり期待していない。 だけどこの頃ずっと真っ暗だった私の世界に、ほんの一筋だけ光が差したような気持ちがする。 それは間違いなく、ひさしぶりに見た彼のおかげだった。
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