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僕は一週間ほど前に、小さな山火事から生まれた。
山の木々を焼き尽くし、山に住む動物たちを驚かせ、そして今もなお消えずにクスクスとそこに存在する。できることならもう一度大きく成長して、僕の存在を見せびらかせたいと密かに願っている。
なぜなら僕は、炎だから。
しかし、再度僕の体を大きくするためには、明らかに食料が足りなかった。
僕の糧となるものは、水分の少ない、いわゆるよく燃えるものなのだが、山の植物や積み重なった落ちた葉は、僕がほとんど食べ尽くしてしまった。
今やもう僕の体は、炭の中で小さくくすぶり、降りかかった塵や鳥の羽をチロリと舌を出して燃やすことが精一杯となってしまっていた。
その日の夜、一人の人間の少女が僕の側に近寄ってきた。
少女の着ている服はところどころ火の粉に焼かれ、まるで大小の黒い花が咲いているようであった。
少女は少しの距離をトコトコと歩いたかと思うと、突然膝をついて石で地面を掘ったり、横たわる木を叩いたりを繰り返していた。
少女の口からこぼれ出た小さな呟きは、たちまちにびゅうと風が空へと運んで僕の耳までは届かなかったけれど、人間の言葉などは僕には必要ない。
僕は、シメシメと思った。僕の存在を誇示するために、あの少女に乗り移り、この身の糧にしてやろう。僕はそう思って、くすぶる木々に焼け移りながら少女を追った。
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