中傷の声

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 ある日、遠い星からやってきた宇宙船が僕たちの星に降り立つというんだ。みんなもその話題でもちきりさ。  僕もその日ばかりはいてもたってもいられなくて、お父さんにお願いして、なんとか外出の許可をもらうことができた。けど僕は、宇宙船が降り立つ姿をこの目で見られるわけじゃない。  だから山の頂まで連れて行ってもらって、宇宙船が星に降り立つ瞬間の音、そしてみんなの歓声を耳にすることができれば、それだけで十分なんだ。  僕がみんなの近くに行くと、みんな僕を避けてしまうしね。  ドーン、とけたたましく地面を叩く音がした。  宇宙船がとうとう着陸したんだ。みんなの歓喜の声も聞こえる。間もなく宇宙船から宇宙人が姿を現したらしく、みんなの声がさらに大きくなった。  でも、何だかおかしいんだ。不思議なんだ。どよめきの渦が動いている。そしてそのどよめきは、僕のいる山をどんどん登ってきて、とうとう僕の目の前で止まった。  すると宇宙人が口を開いた。 「君がこの星で、一番偉いのだろう」  なんのことだか僕全然わからなくて、いえ、あの、ともじもじしていると、宇宙人は続けてこう言ったんだ。 「君以外の奴ら、なんという汚らしい肌の色をしているんだ。ドブの中で育ったカエルみたいで、胸がムカムカしてくる。それに、奴らはみんな声がでかい。まったく、耳が痛くなるよ。みんな耳が聞こえないんじゃないのか」  宇宙人が吐き捨てるように言った言葉は、どうやらこの星のみんなには聞こえてはいないらしい。  宇宙人は続けた。 「それに比べて君は、僕の声をきちんと聞き取れているようだね。肌の色にしたって君は綺麗なピンク色だし、その長い耳も相まって凄く可愛らしい。我々の星のウサギの人形にそっくりだし、必ず人気者になるだろう」  こうして僕は『地球』という星との親善大使になった。 ◆◆◆ 完結 ◆◆◆
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