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 一時間ほどの時間が過ぎた頃であろうか。  歩いては止まりを繰り返していた少女は、次の場所へと向かうことなく、その場に座りこんだままピクリとも動かなくなった。  当然のことだと思った。  僕が山を焼いたせいで、少女の体を凍らせて動けなくさせるほどの寒さはないだろうけれど、夜の闇はとても深い。僕の明かりでは到底及ばない、一人の少女の心を不安にさせるには十分なほどの黒い空が広がっているのだ。  そろそろ頃合いだろう。僕は炭となった小さな木の破片の上で、ありったけの力で体をボウと大きく燃やした。  その瞬間、 「お母さんっ!」  と大声で叫んだ少女に、僕はあっけにとられてしまい、動けなくなってしまった。  少女の視線の先には、燃えて倒れた木の枝に足を挟まれる形で、人間が一人倒れていた。  少女は四つん這いでじりじりと倒れている人間に近寄ると、「お母さんっ、お母さんっ」と何度も叫び続けた。すると倒れている人間の口から、吐息とも区別がつかないほどの大きさで「うぅん……」という言葉が漏れた。どうやらまだ息はあるらしい。
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