憐み

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 最近買った、ゆったりとしたルーズ感が印象的な黒いパンツを鏡で合わせてみた。これに合わせるなら、シャツは白黒の長袖ボーダーにして、ハットも黒で合わせよう。  そうだ、良いことを考えた。サスペンダーを付けても良いかもしれない、シックなピエロ、こりゃあ良い。それなら靴は黒い皮のエンジニアブーツで行くぞ。  だけど、遊び心は忘れたくない。白と黒を中心としたコーデに思い切って真っ青のロングコートを羽織るんだ。鞄は、日本製かばん会社の柔らかい質感より、使い古した感のあるレザーの肩掛けに決定。  口髭の調子も良さそうだ。  さぁ、出かけよう!  家を出てまもなく、近所の女子高生二人組に笑われた。 「カッコワルイ」 「シネッテカンジ」  女子高生達が暴力的な言葉と冷たい視線を飛ばしてくる。  そんな彼女たちの服装は、流行の最先端であるガルシア社の最適スーツで身をくるんでいる。最適の名の通り、スーツの中は最適な温度、湿度に常時保たれ、紫外線や細菌なども防ぐ高性能なものである。そして非常に柔軟で、かつ釘を打っても穴も開かない強度を誇る。そんなグレイの全身タイツを頭からすっぽりとかぶっている。  顔には海女さんのゴーグルサイズの眼鏡をかけていて、そこにはニュースや情報が忙し気にピコピコと表示されている。  これが流行というものだ、嫌になる。女子高生の一人なんて、全身タイツのつるんとした頭の上に青い髪のカツラを乗っけている始末。これがお洒落と言えるのだろうか。  だから僕は、憐みを込めてこう言ってやった。 「ヒャクネンマエノチキュウノファッションガワカラナイナンテカナシスギル」 ◆◆◆ 完結 ◆◆◆
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