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用意された食事を見たN老人は驚いた。
ご飯は何日も前に炊かれていたものか、全体的に固く黄色がかっていた。味噌汁はとても薄く、キャベツの芯や人参の皮が沈んでいて、申し訳なさそうに麩が浮いている。メインの魚の種類は分からないが、なにやら生ごみの臭いがする。お新香からは、何日も漬け込んだ酸っぱいぬかの臭いがしていた。
「……いただきます」
と、N老人は大きく息を吸って覚悟を決めた。一口一口、ゆっくりと口に運び入れる度、こりゃたまらん、と顔が歪められるのを堪えた。
N老人は必至の思いで茶碗を空にして、何日も洗われていないであろう向こうの見えないグラスの水道水を一気に胃に流し込んでから、やっとの思いで言葉をこぼした。
「……ごちそうさまでした」
S老人の息子の嫁は、
「お粗末様でした」
と言って、食器を片付け始めた。
「それでは、さっきの続きと行きましょう」
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