《1》

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《1》

冷たい何かに、鼻先を突かれる感覚。ふとそれに目を覚ますと、目の前には先日生まれたばかりの、小さい手のひらサイズのウンディーネの姿。愛らしい瞳をぱちくりさせ、こちらを見つめるウンディーネ。それから目の前で楽しそうにくるくる回る姿。その姿はまさに、生まれたばかりのウンディーネの純粋さを物語っていた。 「どうしたんだ。何か良いことでもあったの?」 寝起きの思考は、そう簡単には起きてはくれない。けれど、愛らしいウンディーネを見つめて自然と笑みは溢れる。溢れた笑みのまま問いかけた僕を見て、喜々とした表情でこちらを見つめるウンディーネは、まだ言葉を話せない。 その代わりに、僕の周りを飛び回りこちらを嬉しそうに見つめる。 その表情を見てわかったことは、この世に生を受けたことへの喜び、だろうか。 「こっちへおいで」 未だ、飛び回るウンディーネを、自分の手のひらへと呼び寄せた。 大人しく手のひらの上へ座ったウンディーネは、こちらを不思議そうに見つめる。 水よりも、少し低いウンディーネの体温は、冷たくて心地いい。 「この世界は楽しい?」 そう問いかけた僕に、ウンディーネは満面の笑みで何度も頷いた。 そんな愛らしいウンディーネを微笑みながら見つめていると、ふと首元のペンダントが淡く光る。その淡い光は、水中で幻想的な光を輝かせる。 自分の瞳と同じ、そのアイスブルーの宝石がはめ込まれたペンダントは、ここにもうじき、来客が来ることを知らせていた。 「ウンディーネ、僕について来るかい?」 突然の問いかけに、ウンディーネは可愛らしく首を傾げる。そして、暫く僕を見つめてから笑顔で頷いた。 「じゃあ、兄さんと姉さんには内緒な」 そう言ってお互い微笑み合いながら、自室を後にする。
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