《1》

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彩り豊かなサンゴ礁の間をすり抜けて、海の上へ向かって行く。 もうじき来る筈の客人に出くわさないよう最新の注意を払いながらも、ワクワクとした気持ちを抑えきれずにいた。隣にいるウンディーネも、そんな僕を見て瞳を輝かせ、楽しそうに泳いでいた。 しかし、そんな気持ちを覆すかのように徐々に近づく人影を目にし、ドキリとした。 「アベル。どこへ行くんだ」 少し、厳しい責めるような口調で投げかけられた言葉に、思わず立ち止まった。 僕の隣で、ウンディーネが少し怯えたようにこちらを見つめているのを感じた。 僕らに近づく人影が、ヨシュア兄さんだと気付くのに、それ程時間はかからなかった。 「⋯⋯兄さんこそ、どちらへ?」 僕の目の前までやってきたヨシュア兄さんに、白々しくそう返した。 そんな僕を見て、ヨシュア兄さんは若干呆れたように溜め息を吐く。 「父様とライル兄様が呼んでいる」 ⋯⋯どうやら、ペンダントが示していた来客の知らせは、ヨシュア兄さんの事だったらしい。 「⋯⋯皆、お前を心配してるんだ。理解してくれ」 「それは、僕だって理解してるつもりです。でも⋯⋯、でも僕は──⋯⋯。」 言葉を飲み込み、黙り込んだ僕を見て、ヨシュア兄さんは困ったように眉を下げた。 「⋯⋯とにかく、今日は父様達のところに行ってくれ。いいな?アベル」 優しく問いかけてはくれるヨシュア兄さんだが、その言葉には拒否権などないように感じた。 去っていったヨシュア兄さんの後ろ姿を見ながら、下降の一途を辿る気持ちをなんとか持ち直して、ウンディーネに向かい合う。 「ウンディーネ、ごめんね、父さん達の所へ行こう」 隣で未だ、怯えたように僕の影に隠れるウンディーネに、そう言葉をかけて父さん達がいるであろう場所へ向かう。 僕の肩にピッタリくっついたウンディーネの姿を目にし、相当あの雰囲気が苦手だったのだと感じた。生まれたばかりのウンディーネには、あのピリついた空気感が怖かったのだろう。 この先、辿りつく場所の雰囲気を想像して、ウンディーネに申し訳なさを感じる。 謝罪とそして感謝の気持ちを込めて、ウンディーネの頭をそっと優しく撫でた。 すると、ウンディーネは安心したように目を細め、僕に向かって微笑んだ。
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