三茄子

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「ココが最後だな」  P棟最上階の最奥。そこには他よりも一際大きい部屋があった。名前は『生徒会室』となっている。その装いは些か、いや甚だ異様であった。両開きの扉には銀鼠色の鎖が執拗に巻かれ、さらには南京錠までかけられ、これでもかと強固に閉ざされている。まるで他の生徒の入室を頑なに拒んでいるようだ。理由はともあれ、生徒の代表である生徒会の部屋としては、似つかわしくない外見だといえるだろう。 「あれぇ? もしかして新入生ですかぁ?」  一同の後方から猫撫で声が響いた。  振り返ると、そこには身長差がある二人の女性の姿があった。  小柄な方の女性は、制服の上に黄色のパーカーを羽織っている。頭に被せたフードには、猫を連想させる耳が付いていた。 「そのようだな」もう一人の長身の女性が相槌を打つ。  その声は落ち着きのある透き通ったものだった。どうやら先程の猫撫で声は、小柄な女性のものだったようだ。  長い黒髪を後ろで一本に結んだ長身の女性は、藤山 城の姿を認めて「先生、お疲れ様です」と、小さく頭を下げた。  藤山 城は「ああ」と短く頷き、新入生一同に向けていった。 「二人は生徒会執行部2年生だ。これからお世話になることもあるだろうから覚えておけ」 「うわあ! 二人とも可愛い!!」  藤山 城の言葉がスターターピストルであったように、黒美津 杏が勢いよく飛び出した。容姿端麗な上級生の女性二人に対して、早口で質問を飛ばしている。  河塚エルは一連の流れを生徒会室の前から遠巻きに眺めていた。  ふと隣に視線を向ける。そこには綾野 和鷹の姿があった。  彼は強固に閉ざされた生徒会室の扉を、メガネの奥から鋭い目つきで眺めていた。
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