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二戦を終え、現在の戦況を整理する。
自分の手札は『グー, チョキ, パー, グー+, パー+』。
相手の手札は『グー, チョキ, パー, チョキ+, パー+』。
さて、次の手はどうするべきか。
「今回はコレです!」
河塚エルが思考を巡らせていると、とみんはさっさとカードをセットした。
彼女の様子にヒントはないかと、思考をスイッチする。
そしてあることに気づく。とみんは、初手と二手目で同じ手を出した。その時の映像を脳内で再生する。記憶の中の彼女は、手札の同じ位置からカードを出していた。
もしや彼女は手札をシャッフルしていないのではないか。そんな考えが浮かんだ。
記憶を辿る。ゲーム開始から今まで、彼女が手札をシャッフルしている映像は見当たらなかった。
それなら彼女が今セットしたカードは何だ?
自分が手札を配られた時、カードは左から「グー」「チョキ」と綺麗に並んでいた。そして、とみんが『グー+』を出した初手と二手目。記憶の中の彼女は左から四番目のカードを出していた。それは自分の手札にあった『グー+』の位置とも重なる。
そして今回とみんがセットした手も、左から四番目のカードだった。前回『グー+』を失ったということは、そこには『チョキ+』があったことになる。
となれば自分が出すべきは『グー』か。『グー』で『チョキ+』に勝てば、相手の『チョキ+』を奪うこともできる。
万が一、とみんが罠を仕掛けている可能性を考慮しても、『グー』なら致命傷にはならない。[N]のカードであるため、相手にカードを奪われる心配もない。
河塚エルもカードをセットした。
「両者セット完了。オープン」
金剛がめくったカードは、河塚エルが『グー』、とみんは『チョキ+』だった。
これで河塚エルの手札には、再び六種類が揃った。
とみんの方は『グー, チョキ, パー, パー+』の四種類だ。
「――あ! やってしまいましたぁ」
『チョキ+』を奪われ動揺したか、とみんは手札を落としてしまった。慌てて拾い集める。彼女にとっては運の良いことに、河塚エルはこれでとみんがセットする手を読めなくなった。
しかし河塚エルに動揺の色はなかった。これまでのとみんの手から、彼女の選択に戦略の文字はないことを確信していたからだ。
純粋に勝率が最も高い手を出しておけば、まず間違いないだろう。これが河塚エルの考えだった。
二人がほぼ同時にカードをセットする。
「両者セット完了。オープン」
河塚エルのカードは『パー+』、とみんのカードも『パー+』だった。
勝敗は引き分け。お互いの『パー+』は没収となった。
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